世の中はあるにまかせてすぐすかな
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こたへぬ空をうちながめつゝ　　　　　

しばらく更新が空いてしまいましたが、今回はほとんど取り上げられていない歌を選びました。良経の歌としては平凡な部類なのかもしれませんが、ふーむは悪くないと思っています。ここは『落穂ひろい』ですから、気が付いたら拾うんです(^^)有名な歌ばかりじゃつまんないでしょう(笑）。

世の中は、思うようにはいきません(ラッキーな人もいますが^^;）。ここでいう世の中は、なんでしょう。男女の間柄のことかも知れませんし、良経の地位を考えると政治に関することやも知れません。いずれにせよ、上句は彼のつぶやきそのものです。

ああ、いっそあるがまま、成り行きに任せて過ごすほうがよいのか。

下の句で、情景は彼の内面からぐぐっと引いて、青年公卿が一人、ぽつねんと空をみつめながら、もの思いにふけっている様子が映し出されます。「こたへぬ空をうちながめつゝ」空は、しかし答えてくれない。
空をみながら…とはいいますが、実は心の空をみつめて、自問自答している。こんなところに、良経の和歌に時々みえる「心の空」が隠れています。空をみながら、自分に問いかける、しかし、空はおろか自分の心までが、その問いを拒んでしまう。答えを、出したくないんでしょうか。わかっていることだけれども、わかりたくないのかもしれない。こういうもの思い、きっと誰もが経験していることでしょう。深刻度の差はあっても、やっぱり人間悩んでいるときは、こんな感じかもしれません。

ちなみにこの歌、建仁元年(1201)二月の老若五十首歌合で発表されたものの、またまた叔父さんの慈円と合わされ、負けています。慈円の歌は、

　　おもふ事をなどとふ人のなかるらん　あふげば空に月ぞさやけき
　　　（思うことを、なぜ問う人がないのだろうか。
　　　　　　　　　　　仰ぎ見れば空に、月が澄みわたっているというのに）

良経の歌とちがって、お坊さんらしい発想で、答えのはっきりした歌です。空をながめて答えをださぬ良経に、月をみてみなさいよ、とさとすような。この二首、うまく合わされています。
しかし…どうも私は、慈円に負ける歌と相性がいいようです^^;